野生動物
感覚・運動能力・生命力の面で、人間は野生動物よりも劣った存在であるとされる。これは人間が脆弱な肉体を持つことに起因する。このため個体という単位で自然環境に放り出された人間は容易く死亡する。にも関わらず人間(ヒト)は、微生物や昆虫といった極めて短いサイクルで生活する生物を除けば、地球上(陸上)でもっとも繁殖に成功した種族といえる。
これは偏に人間が持つ知恵や文明に負う所が大きく、人間は人間社会に依存して生活している。特に自然環境の厳しい地域では、一部の民族的例外を除けば、人間は僅かに文明から離れただけでも死の危険を迎えるほどである。このため古い人間社会では、知恵や文明に依らずとも厳しい環境下で生存する動物に対して畏敬の念すら抱き、トーテミズムなどの宗教の原型ともなっている。
これら野生動物の環境耐性の高さは、単に適応の結果に過ぎない訳でもあるが、その一方で脆弱な肉体しかない人間は、野生の肉食動物にとっては「愚鈍で弱く、集団ではやや危険度も高いながら、個体としては捕らえて食べ易い動物」に過ぎない。人間はこれらの脅威となる野生動物を殊更危険視して、これを撃退するための知恵を発達させてきた。その原点には火を道具として使う事が挙げられる。
もっとも、文明の発達する前の人間の肉体的能力を、現在人のそれで想像するのは問題がある。明治維新の頃の志士は東海道を一人で何度も往復していることからもわかるように、交通手段の発達していなかった頃の人間の脚力は今日のそれとは比べものにならない。同様にほかの肉体もそれが当てはまる。客観的に見ても、ヒトの体はサル類では最大に近く、ほ乳類全体で見ても大きい方に当たる。特に目の高さはそれが顕著である。また、よく発達し、複雑な動きをこなす手足は動きの自由度が高い。確かに爪や角や牙に関しては脆弱ではあるが、たとえば棒一本、石ひとつ持てばその点は解消される。むしろ人類はその初期から大型ほ乳類にとって強力な捕食者として働いたとの考えもあり、マンモスなどの絶滅に関わったとの説もあることは考慮に値するであろう。

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